創業が万延元年(1860年)ですから、加藤吉平商店は150年余りの歴史を持つ酒蔵ということになります。商店としては私が11代目の当主です。主力商品である「梵/BORN」という銘柄の日本酒をはじめ、数多くのお酒が国内外の晩餐会・国際行事で公式酒として使われています。
福井の鯖江に拠点を置きつつ、「梵/BORN」ブランドは世界100カ国以上で商標を登録していますし、40カ国以上で販売も行っています。私には「本当にいいものは、どこでも勝負できる」という信念があるんです。これは、日本酒だけでなくどの産業でも同じことなんじゃないでしょうか。福井県は日本の中心に位置しており、日本全国に向けて発信しやすい立地だと思います。いいものは、地域で売れ、国内で売れ、そして海外でも売れていく、というのは自然なことではないでしょうか。
でも、現実はなかなか難しい。福井県は、メガネのフレームや繊維、業務用漆器などにおいて相当な国内シェアを持っていますし、小中学生の学力は常にトップを競い合っています。誇るべきものは、むしろ他県に負けないぐらいあるんですよね。ただ、知名度が低いんです。
自分がやっている仕事が半径5km以内でだけしか通用しないよりも、もっと広い場所で認められて活躍できる方が面白いに決まっています。私の場合は日本酒ですから、この1本の酒から、鯖江を盛り上げたい、福井を盛り上げたい、日本を盛り上げたいという想いは常に持っています。
鯖江商工会議所の副会頭という立場でもあるので、地元の産業に従事している方とはよく話すんですが、その際に言うのは、とにかく「もっと外に出ましょう」ということ。そこで必要になるのが、Webサイトなんです。Webサイトというのは、企業の「顔」そのものですよね。
当社でもずいぶん前からWebサイトを持っていますが、海外とも取引が多い「梵/BORN」にとっては本当に大事ですね。ブランドとしての信用はもちろん、お客様と直接会話できる場でもありますから。そういう点について、いま、さらなるリニューアルをしている最中です。
Webサイトの場合、どうインタラクティブな構造にするか、どう押しつけがましくないようにするかも大切なことですが、その前にどうやって目にしてもらうかが大切なことですね。「好きなラーメン屋」にせよ、「好きなお酒」にせよ、人は数銘柄程度しか記憶できません。IT技術を駆使して検索の順位を上げる努力も大切ですが、まず、名前を覚えていただく努力が必要。大原則ですね。
そういう意味で、ドメイン名も覚えやすいのが第一。Webサイトがその企業、そのブランドの「顔」なら、ドメイン名はその核だと思います。「.jp」というだけで、日本のブランドなんだってすぐに伝わりますから。
地元の皆さんも、福井をもっとアピールしたいという想いは共通です。ドメイン名に「fukui」が使えるようになれば、当然のことながら、世界中に福井ブランドを発信していくことができます。ただ、もったいないことに、「福井では通用しないんじゃないか」という消極的な気持ちもどこかで持っている気もします。正直、私も外国人に福井県の場所を説明する際、「North Kyoto(京都の北部)」と説明してしまうこともありますからね(笑)。まずは、そこを乗り越えて、福井のことを胸を張ってアピールしていく必要があるんじゃないでしょうか。
福井県は、先人たちの知恵による数多くの産業を持っていますし、日本を代表する各界のリーダーを数多く輩出するなど、ポテンシャルはあるんです。「都道府県型JPドメイン名」というサービスを活用しながら、各業界で力を出し合って、福井を盛り上げていければいいですね。
創業150年の老舗酒蔵である加藤吉平商店11代目当主。主力の「梵/BORN」シリーズは、国際コンテストで数十回以上の最高賞を受賞。カンヌ国際映画祭や日韓ワールドカップなど、世界の公式行事でも選ばれている。鯖江商工会議所副会頭。
加藤吉平商店 http://www.born.co.jp/
※インタビュー特集の記事内容は2012年9月時点のものです。