今、私は大学教授として教鞭をとるかたわらで、日本各地の温泉地を取材しながら、「源泉かけ流し」の普及活動をしています。「源泉かけ流し」というのは、湧き出したままの成分を損なわず、常に鮮度の高い源泉が浴槽を満たしている温泉のことです。あまり知られていないことですが、温泉によっては、殺菌のために塩素系薬剤を投入しているところもあります。日本全国に温泉地はありますが、エリア内の温泉宿すべてが「源泉かけ流し」の基準を満たしている温泉地は限られています。
私が名誉会長を務めている「日本源泉かけ流し温泉協会」では、基準を満たした国内10カ所の温泉地を選定しています。中には「源泉かけ流し」を推進したことで、集客が倍増したエリアもあります。日本には毎年多くの外国人観光客が来ていますが、特にアジア諸国からは温泉を目的にした人が大勢来ます。今後の日本は、もっと温泉を観光資源に活用していくべきだと思いますね。
「源泉かけ流し」の温泉地として、北海道からは3カ所が選ばれています。レベルの高さがうかがえますね。実は北海道は、国内でも「源泉かけ流し」の割合が特に高い地域でもあります。昔から北海道は、自然・食に恵まれた地として、観光客から大きな人気を得てきましたが、温泉地としてももっとアピールしていけます。そして、その発信は国内だけでなく海外へもしていくべきでしょう。
そこで欠かせないのが、インターネットです。北海道ブランドは、既に国内はもちろん、アジア諸国にもよく浸透していますが、インターネットでの情報発信によって、それはさらに強化されるはずです。「都道府県型JPドメイン名」は、ドメイン名の中に「hokkaido」という文字が含まれるものですが、思うに、このサービスの利点を最大限生かせるのは、まさに北海道なんじゃないかと思います。ブランドとしてのポテンシャルがあるからこそ、ドメイン名で都道府県名をアピールすれば最強になりますよね。
温泉の専門家という立場ですので、温泉の情報には頻繁に触れていますが、昨今はインターネットを通じて情報を得る機会が圧倒的に増えました。かつては紙媒体から情報を入手することが多かったのですが、今は大半がWebサイトからです。特にまだ行ったことのない温泉地や宿については、インターネットを使った方が便利なこともあります。私は書籍の著者でもあるので、実はインターネット上の情報は最大のライバルでもあるんですよね(笑)。
しかし、インターネット上は情報洪水のような状態です。膨大な情報の中から、自分に必要なものを取捨選択するのは大変なことでしょう。ただし、「△△△.hokkaido.jp」というドメイン名があれば、情報の検索効率を上げる効果があると思います。スピーディーであること、写真や動画が簡単にアップできること、修正や削除が簡単なことなど、情報の発信や収集という視点から見ると、インターネットはやはり不可欠なツールだと思いますね。
北海道は「行きたい場所」「住みたい場所」といったアンケートで、常にトップにランキングされています。実際に訪れた人々は、雄大な風景を眺めて、美しい花を見て、美味しい魚介類を食べて、本当に満足して帰っていく。ただ、この自然の恵みに甘えていてはだめなんです。サービスにせよ、情報発信にせよ、積極的に取り組むことで、観光地としてのブランド力をもっと上げていく努力も必要です。観光業はその周辺の産業にも大きな経済効果を波及させます。観光客が増えることで、本来の北海道の基幹産業である農業や漁業が支えられるという視点は大切でしょうね。
「源泉かけ流し.hokkaido.jp」、「温泉.hokkaido.jp」など、「都道府県型JPドメイン名」の活用法はいくつもあると思いますが、期待度は非常に大きいです。「hokkaido」という文字が世界中に露出して、検索されるようになれば、ますます北海道は賑やかになりますね。
1949年生まれ。文学博士・医学博士。“温泉教授”としてよく知られている。温泉関連の本を数多く執筆。入浴した温泉の数は4700以上。著書は『温泉手帳』(東京書籍)、『江戸の温泉学』(新潮社)、『温泉力』(ちくま文庫)、『温泉に入ると病気にならない』(PHP新書)、『温泉教授・松田忠徳の新日本百名湯』(日経ビジネス文庫)など130冊以上。「日本源泉かけ流し温泉協会」の名誉会長。
松田忠徳 温泉博士の独り言 http://onsen.u-p.co.jp/matsuda/
※インタビュー特集の記事内容は2012年9月時点のものです。